よもぎ蒸しに近い民間療法を中学生のころから試したことがあります。足の冷え性を改善するためでした。でも思い返して「効いた」という記憶がありません。
2009年に都内の治療院で、ヨモギパッドを紹介されたときも半信半疑でした。当時、産後数年たっても疲労が改善されず、生理周期に合わせて様々なトラブルがありました。特にひどかったのが、排卵期の乳頭痛です。下着が当たるのが苦痛なほど乳頭に痛みがありました。そんな時に、排卵期にヨモギパッドを使用したら「嘘のように」気にならなかったのです。
このような個人の経験をきっかけに、ヨモギパッドが何に効くのか、なぜ効くのか、気になる点は、などを工夫してきました。改めてヨモギパッドを鍼灸マッサージ師としておススメしたいセルフケアだと思いました。今回はその内容を投稿します。
※注意:男性の性器は長時間温めすぎることは禁忌と学んでいます。安全と言い切る根拠が調べきれなかったので、この方法は女性に限定してお届けします。
こんな症状をサポートします
下半身の冷え |
排卵痛 |
PMS |
産後の疲労 |
妊娠中のほてり |
ホットフラッシュ |
上半身の汗 |
疲れやすい |
風邪由来の冷え性 |
風邪の症状が長引くとき |
よもぎ蒸しの簡易版。使用前にカイロを振るのがポイントです
よもぎ蒸しという韓国の民間療法があります。よもぎを何らかの方法で蒸して、その蒸気を下半身を中心に全身に浴びさせます。産後や陰部の症状を緩和する目的で使用され始め、現在は冷え性や婦人科の不調でも使用されているそうです。
よもぎパッドは、よもぎ蒸しの簡易版です。よもぎ蒸しが座ったまま数十分じっとしているのに対して、ヨモギパッドは生理用品同様にショーツに着けて移動できます。アクティブな日常にお手軽に使えるのが利点です。

このように、乾燥ヨモギが入ったシートと専用カイロが1セットとして入っています。

それぞれの封を開けて、ヨモギパッドの裏側にカイロを貼ります。この時に、カイロをよく振ってください。カイロが空気に触れて発熱します。あとは、生理用ナプキン同様にショーツにセットして完了です。
おススメのメーカーさんはダナミさんとイエジミンさんです。国内のメーカーさんもありますが、大量購入して安く手に入るものの中で、二つは品質が安定してお手頃だと思います。
なぜヨモギパッドが良いのか
よもぎ蒸しと違って、ヨモギパッドは装着に数十秒だけしかかかりません。ふだんの生活にセルフケアを手軽に取り入れるためには、時間をかけずに効果が出せることは重要です。ヨモギパッドは短くて済むのが魅力です。
また価格も魅力的です。私がヨモギパッドを知ったのは、2009年ごろです。当時は一つが350円ほどしました。現在は100円(大量購入)から150円ほどです。一方、仙骨カイロはミニカイロ一つが10円から30円です。コスパ的には仙骨カイロよりは劣りますが、ヨモギパッドは婦人科トラブルに強いため、症状に応じて組み合わせるにはお手頃なセルフケアと言えます。
私達は陰部を温める習慣がありません。だから「陰部が冷えている」という自覚がほとんどありません。ですが、一度ヨモギパッドを体験すると、冷え性の方は「陰部の冷え」を自覚できるようになります。同時に、からだのどの部位が快適になるかを実感できます。
陰部が温まると、不調が緩和される。このアプローチを体感するには、ヨモギパッドはおススメの商品だと思っています。
鍼灸師の禁忌ツボ、会陰にアプローチできる
ヨモギパッドが温める陰部には「会陰」というツボがあります。赤ちゃんの出産時に切開するか否かで耳にする「会陰」は、このツボの名前が由来で、ほぼ同じエリアです。
会陰は、任脈という、からだの真正面を貫くツボのルートのスタート地点です。任脈は一言でいうと、からだを支える大事なルートです。全ての臓器の反応が集まりますし、ホルモンバランスも整えます。ヨモギ蒸しが婦人科の不調に用いられたのも、任脈とのつながりからだと推測します。
会陰は、鍼灸師にとっては禁忌のツボです。なぜなら、場所がきわどくて、さわりにくいからです。それがヨモギ蒸しなら下から陰部を温めるので簡単にアプローチが出来ます。ヨモギパッドも同様です。鍼灸マッサージ師が使えないツボを、セルフケアでは使える。そういう意味でも、ヨモギパッドは優秀だと考えます。
特に冷えのぼせ(首から上の汗)にはおススメしたい
このように、会陰は婦人科のトラブル全般に対してサポートできます。また、陰部を温めることで、骨盤内や下半身の冷え性改善も期待できます。
中でもおススメなのは、首から上に大量に汗をかく症状に対してです。これは、妊娠後期の妊婦さんや、ホルモンバランスが乱れやすい更年期の女性が抱えやすい症状です。
からだはこの時、首から上は暑いのですが、下半身(へそから下)はすごく冷たくなりがちです。東洋医学ではこの状態を上実下虚(じょうじつかきょ)と言います。気や血、水分は上と下をグルグルと循環していますが、上実下虚では循環させる力が弱く、結果として下半身は冷えて上半身がのぼせる状態になります。
ヨモギパッドは、冷えた下半身に熱を加えることで、滞りを強制的に循環させます。と言っても体が本来持つ機能よりは衰えますので、完全に解消するには至らないかもしれませんが、不快な症状を軽減出来て、他の症状も同時に緩和出来るという点では優れています。
欠点は下半身に汗をかくこと、におい
欠点としては、上半身に汗をかかない代わりに、下半身に汗をかくことです。特に夏場などは、下着の周りに汗をびっしりかきます。私は、冷えのぼせを下の子を妊娠した時に経験しました。臨月が暑い時期でしたので、ヨモギパッドを使用すると、下半身に大量の汗をかきましたが、首から上の汗よりは快適に過ごせました。また、手ぬぐいを仙骨周囲に当てることで不快感は軽減できました。なので、皆さんも工夫してみて、それでも不快ならこの方法はおやめくださいね。
ヨモギパッドは月経時は使用できません。生理前のPMSや排卵期のトラブルにのみ使用できます。また、ヨモギが含まれるため、トイレでショーツを下すたびに、むわっと匂います。匂いが不快な場合もおすすめしません。
「陰部を温めるのであれば、貼るカイロをショーツの外側から当てればよくない?」と考えるクライアントさんがいました。その試行錯誤の結果をずっと聞きそびれているので、効いたらまた加筆します。
なお、ピップさんからショーツの外から当てるヨモギパッドが発売されています。これは個人的に謎の商品です。ショーツの外側から当てるのに、ショーツにあたる部分に、ヨモギが含まれています。ヨモギの効果がショーツを透過するのか??謎です。
風邪由来の冷えや、しつこい風邪の症状にも
オーラの調整と鍼灸では、風邪の症状があると、たとえ一番つらい不調が腰痛でも、風邪の治療を必ず加えます。
オーラの場合は、どの部位で風邪の調整を行うかを判断します。症状が重かったり、しつこい場合は、会陰で風邪を治療します。陰部をヨモギパッドで温めることは、風邪をこじらせていたり、症状が重い場合もおすすめします。
また、からだの冷えがなかなか改善しない時は、風邪由来の冷えの可能性もあります。これは一般の方では判断がしにくいと思いますが、風邪の自覚症状がある(あるいは引いていた)+普段より冷えが気になる場合は、風邪由来と考えてヨモギパッドを使用するのもありかと思います。
と、風邪へのセルフケアとしてヨモギパッドが使えると書きましたが、しつこい風邪の場合は、風邪の治療に対応している鍼灸マッサージ師の治療を受けることをおススメします。病院では「ゆっくり休む。栄養を摂る」以外のアドバイスはできず、投薬で自然治癒を待つしかありませんが、鍼灸マッサージはその自然治癒力を引き出します。ついでに、肩こりや腰痛や咳からくる筋肉痛なども改善できるので、良ければご検討ください。
どこまで改善できるのか
セルフケアには限界もあります。症状が重かったり、不調が始まってから時間がたっている場合、他にも色々な不調がある場合、メンタルも傷ついている場合などは、セルフケアだと悪循環になるリスクがあります。
ヨモギパッドは、最初に書いた通りいくつもの不調に同時にアプローチできます。ですが、ヨモギパッドだけで不調を改善するのもおすすめしていません。ヨモギパッドは「からだを整える作用」として有効です。からだは、運動や食事・睡眠・心の状態でも左右されます。それらはふだんの生活そのもので、私達鍼灸マッサージ師では整えられません。本格的な改善を目指すのであれば、セルフケアはふだんの生活こそがカギになると考えます。
でも、ふだんの生活を改善するって、大変ですよね(笑)。私たちはその大変さから目をそらすために、何か目新しくて簡単にできる方法を探してしまいます。これは私たちの本能というか、誰にでもある思考だと思います。
ヨモギパッドは、ヨモギパッドだけで改善を目指しませんが、ふだんの生活に目を向ける、そのハードルを下げてくれる気がします。なぜなら、からだが楽になると、億劫なことにも目を向けられるからです。ヨモギパッドに限らず、からだが気持ちが良いと感じたセルフケアは、からだを楽にしますし、「これもやってみよう」という意欲も引き出します。限界もありますが、可能性があるのも事実です。
良ければぜひお試しください。
五十嵐いつえ